2009-02-06(Fri)
麻衣妖炎 第三十話
「実はね、これでもモテちゃうんだから」 裕子はおどけてみせる。
「えっ?何?」
「ラブレターがいっぱい来るの」
「何処から?」
「全国から」
「ほっへ? ゼンコク? ゼンコクってどこよ」
「全国がどこよって言われても困るけど、ホントに全国津々浦々」
「ヘーェ、いつ頃から?」
「高校選抜でアジア四ヵ国大会に出て、それが雑誌に載った時くらいからかなぁ?」
「その雑誌、見たことある。 てか、そう言えばヒロが持って来てくれて、みんなで見たんだ」
「ヘーェ、そうなんだ。ヒロ!偉い!」
「別に偉くはないけど」
「どのくらい来るの」
「月にピークで300通くらい。 最近は少なくなって20通くらいかな」
「ドッヒャ~! 返事、書けないでしょう」
「でもね、半分以上は住所も名前もないの。 それでも残り半分でも無理。 だから定番の文章作ってコピーして、とりあえず返信したわ。 住所書きはお母さんね」
「アイドルじゃん、ヒロ。 いいなぁ~」
「たまには自分でも返事を書く事もするわ。 でもね、いい事も、悪い事もあるの」
「悪い事って?」
「やっぱり試合中ね。個人名で声援が聞こえると、最初のうちはなんか恥ずかしかった。動揺していたのかな、ミスを連発する事もあった。 監督にひどく怒られて悩んだわ」
「その声援してくれる人が手紙をくれてくれるんだもんね」
「そうなの。 向こうは私の事知っていて私は全然知らない。 なんとなく何時も見られているようで、最初のうちはトイレも行けなかったわ」
「アイドルの辛いところね」
「監督に怒られてから、その『頑張って~』って言う声を味方につけるようにしたの。 頑張らなくちゃ、プレーで返さなくっちゃと思い込むようにしたの」
「プロね」
「ボールが動いている時は集中しているから気にならないけど、サーブの時に名前を連呼されるのは中々慣れなかったなぁ」
「じゃあ、声援されるのは苦手?」
「うぅ~うん、サーブの時『そーれぇ』って言われるとボールのスピードが早くなるように思えるもの。 サーブが上手く行った時はものすごっく気持ちいいわ。 サービスポイントが取れた時には、会場も沸くし私もやったーって最高に嬉しい」
やっぱりヒロはバレーボールの話をすると活き活きしている。
「やっぱ!モテモテだね、ヒロは。 で、手紙の人とは会ったことはあるの?」
「会場では会ったことはあると思うの。 相手が言ってくれないとわからないから。 後で手紙をもらって、あの時はお話し頂いてありがとうって書いてあるけど、大勢いるし、顔もわからない。 会場の外で会うことはないわ」
「じゃあ、愛しの君とはまだ出会えてないんだ」
「そうね。 部内では男子禁制の不文律があるし、卒業してからにしようと思ってる」
「わ~、選り取り見取りなんだ!」
「実は、この話には落ちがあるの」
「オチ?」
「私、わかった!」とクミ。
「そう、落ち。 それはね、手紙をくれる99%が女の子。男の子はほんの数人。」
「そっか~、やっぱ、そうだよね。女の子だったらわかるけど、男の子だったら直球ストレートだもんね」
「あら! イケナイ! 食事の時間が始まる!」
大慌てで飛びだし、浴衣を着る。着替え中でも「腹減ったぁー」お酒の話になる。
みんな二十歳を越え少しはイケる口になったみたい。
最初はビールで乾杯。
そのうち誰が言ったかわからないけど日本酒、お酒も追加された。女っていいなぁ思う。
浴衣姿で女がお銚子を持って、お猪口を持っている人についであげる。
腕から垂れる浴衣の大きな袖。 なんか絵になる。
しかもここは京都。 腕を上げてお酒を飲む姿は妙に色っぽい。
食事後の話題は久美子の身の上話から始まった。
「えっ?何?」
「ラブレターがいっぱい来るの」
「何処から?」
「全国から」
「ほっへ? ゼンコク? ゼンコクってどこよ」
「全国がどこよって言われても困るけど、ホントに全国津々浦々」
「ヘーェ、いつ頃から?」
「高校選抜でアジア四ヵ国大会に出て、それが雑誌に載った時くらいからかなぁ?」
「その雑誌、見たことある。 てか、そう言えばヒロが持って来てくれて、みんなで見たんだ」
「ヘーェ、そうなんだ。ヒロ!偉い!」
「別に偉くはないけど」
「どのくらい来るの」
「月にピークで300通くらい。 最近は少なくなって20通くらいかな」
「ドッヒャ~! 返事、書けないでしょう」
「でもね、半分以上は住所も名前もないの。 それでも残り半分でも無理。 だから定番の文章作ってコピーして、とりあえず返信したわ。 住所書きはお母さんね」
「アイドルじゃん、ヒロ。 いいなぁ~」
「たまには自分でも返事を書く事もするわ。 でもね、いい事も、悪い事もあるの」
「悪い事って?」
「やっぱり試合中ね。個人名で声援が聞こえると、最初のうちはなんか恥ずかしかった。動揺していたのかな、ミスを連発する事もあった。 監督にひどく怒られて悩んだわ」
「その声援してくれる人が手紙をくれてくれるんだもんね」
「そうなの。 向こうは私の事知っていて私は全然知らない。 なんとなく何時も見られているようで、最初のうちはトイレも行けなかったわ」
「アイドルの辛いところね」
「監督に怒られてから、その『頑張って~』って言う声を味方につけるようにしたの。 頑張らなくちゃ、プレーで返さなくっちゃと思い込むようにしたの」
「プロね」
「ボールが動いている時は集中しているから気にならないけど、サーブの時に名前を連呼されるのは中々慣れなかったなぁ」
「じゃあ、声援されるのは苦手?」
「うぅ~うん、サーブの時『そーれぇ』って言われるとボールのスピードが早くなるように思えるもの。 サーブが上手く行った時はものすごっく気持ちいいわ。 サービスポイントが取れた時には、会場も沸くし私もやったーって最高に嬉しい」
やっぱりヒロはバレーボールの話をすると活き活きしている。
「やっぱ!モテモテだね、ヒロは。 で、手紙の人とは会ったことはあるの?」
「会場では会ったことはあると思うの。 相手が言ってくれないとわからないから。 後で手紙をもらって、あの時はお話し頂いてありがとうって書いてあるけど、大勢いるし、顔もわからない。 会場の外で会うことはないわ」
「じゃあ、愛しの君とはまだ出会えてないんだ」
「そうね。 部内では男子禁制の不文律があるし、卒業してからにしようと思ってる」
「わ~、選り取り見取りなんだ!」
「実は、この話には落ちがあるの」
「オチ?」
「私、わかった!」とクミ。
「そう、落ち。 それはね、手紙をくれる99%が女の子。男の子はほんの数人。」
「そっか~、やっぱ、そうだよね。女の子だったらわかるけど、男の子だったら直球ストレートだもんね」
「あら! イケナイ! 食事の時間が始まる!」
大慌てで飛びだし、浴衣を着る。着替え中でも「腹減ったぁー」お酒の話になる。
みんな二十歳を越え少しはイケる口になったみたい。
最初はビールで乾杯。
そのうち誰が言ったかわからないけど日本酒、お酒も追加された。女っていいなぁ思う。
浴衣姿で女がお銚子を持って、お猪口を持っている人についであげる。
腕から垂れる浴衣の大きな袖。 なんか絵になる。
しかもここは京都。 腕を上げてお酒を飲む姿は妙に色っぽい。
食事後の話題は久美子の身の上話から始まった。