2012-01-10(Tue)
あおりんご 31
《第四章 ゆいの想い》
パンパンパン! 手を叩く大きな音が室内に反響した。
「それじゃ、ダメでしょう。 唯ちゃん」
ピアノ教室でピアノを弾いていると突然先生が手を叩いた。
「そこはもっと情感を込めてって言ったでしょう」
「・・・」
「そこはそんなに走っちゃダメ、焦っちゃダメよ」
「・・・」
「どうしたの、最近唯ちゃんおかしいわよ。 なにかあったの」
「・・・、いえ、特には」
「唯ちゃんは“デキる子”だから返ってたいへんなのはわかるけど、少しは落ち着いたら。 走ってばっかりよ」
「あっ、はぃ・・・」
ピアノ教室の帰り道、暗い気持ちで自転車をこいだ。
先生の云う事はわかる。
わかってるけど、自分でもどうしようもなくイライラしているのもわかってる。
最近、何をしても面白くないのだ。
楽しい読書をしてても面白くない。
ピアノを弾いてても楽しくない。
理解が深まると嬉しくなる勉強も身が入らない。
学校でも、お家にいても、お友達とおしゃべりしても、なんにも面白くない。
生活が・・・人生が・・・ちっとも面白くない。
暗い夜道。
今日はいつもと違う道を通って帰ろう・・・そう思った。
先生の云ったことが思い返される。
『唯ちゃんはお勉強もできて、ピアノも弾けて、なんでも出来る“良い子”なんだよね。
でも、それがつらい時があるんじゃない?
みんなから尊敬されて、期待されて、それがうっとおしい時もあるんじゃない。
たまには悪いことをしてみたいって考えてるんじゃないかな?
ハメを外して、思いっきり遊んでみたい。 そう思ってる? もっと自由に、羽ばたくように』
自分の中にモヤモヤしたものはあった。
それがなんだかわからずにモヤモヤしてる。
「・・・」
先生が続けた『唯ちゃんにはボーイフレンドいるの?』
首を横に振った。
『好きな人は?』
また、首を振った。
『そっかぁ、いないんだ。 じゃぁ恋をしなさい。 片思いでもいいから。
見ている感じ唯ちゃんに合いそうな男の子はわからないけど、だったら片思いでいいの。
胸が熱くなる様な気持ちになれば、このロベルト・シューマンの気持ちもわかるわよ』
『唯ちゃんはテクあるから、あとは気持ち。 頑張って』
「はい、先生」
パンパンパン! 手を叩く大きな音が室内に反響した。
「それじゃ、ダメでしょう。 唯ちゃん」
ピアノ教室でピアノを弾いていると突然先生が手を叩いた。
「そこはもっと情感を込めてって言ったでしょう」
「・・・」
「そこはそんなに走っちゃダメ、焦っちゃダメよ」
「・・・」
「どうしたの、最近唯ちゃんおかしいわよ。 なにかあったの」
「・・・、いえ、特には」
「唯ちゃんは“デキる子”だから返ってたいへんなのはわかるけど、少しは落ち着いたら。 走ってばっかりよ」
「あっ、はぃ・・・」
ピアノ教室の帰り道、暗い気持ちで自転車をこいだ。
先生の云う事はわかる。
わかってるけど、自分でもどうしようもなくイライラしているのもわかってる。
最近、何をしても面白くないのだ。
楽しい読書をしてても面白くない。
ピアノを弾いてても楽しくない。
理解が深まると嬉しくなる勉強も身が入らない。
学校でも、お家にいても、お友達とおしゃべりしても、なんにも面白くない。
生活が・・・人生が・・・ちっとも面白くない。
暗い夜道。
今日はいつもと違う道を通って帰ろう・・・そう思った。
先生の云ったことが思い返される。
『唯ちゃんはお勉強もできて、ピアノも弾けて、なんでも出来る“良い子”なんだよね。
でも、それがつらい時があるんじゃない?
みんなから尊敬されて、期待されて、それがうっとおしい時もあるんじゃない。
たまには悪いことをしてみたいって考えてるんじゃないかな?
ハメを外して、思いっきり遊んでみたい。 そう思ってる? もっと自由に、羽ばたくように』
自分の中にモヤモヤしたものはあった。
それがなんだかわからずにモヤモヤしてる。
「・・・」
先生が続けた『唯ちゃんにはボーイフレンドいるの?』
首を横に振った。
『好きな人は?』
また、首を振った。
『そっかぁ、いないんだ。 じゃぁ恋をしなさい。 片思いでもいいから。
見ている感じ唯ちゃんに合いそうな男の子はわからないけど、だったら片思いでいいの。
胸が熱くなる様な気持ちになれば、このロベルト・シューマンの気持ちもわかるわよ』
『唯ちゃんはテクあるから、あとは気持ち。 頑張って』
「はい、先生」