2012-03-06(Tue)
あおりんご 54
帰り道はキスしたドキドキ感と、キスなんかして本当に良かったんだろうかと心中複雑だった。
レモンやオレンジの味はしなかったけど、でも確かに恋の味がした。
とっても爽やかで、大人びた自分が微笑ましく背伸びした気分。
その一方、ちょっぴり早いおとなの恋の経験に、本当に良かったんだろうかと思う心もある。
思春期の恋は複雑だ。
いろんな人の恋ばなしも聞いてみたいけど、今の私の立場でそんなことは聞けるはずない。
いいわ、私は私。
自分の恋がしっかりしていれば、それだけでいい。
人なんか関係ない。
私は私だもん、そうよ、きっとそうなの。
なんとなく自信めいた気分になれた。
シェークスピア “誠の恋をするものは、みな一目で恋をする”
ちょっぴり気になっていたことがあった。
自分は恋に落ちただろうか?
あの日、あの夜、懸命にバットの素振り練習をする彼の目。
あの目を見た時から変な気分になった。
それは何?
最初のうちは自問自答した。
“女は一瞬にして恋に落ちる”
その言葉に助けられた。
そう、私は女なんだ。
シェークスピアの云うとおりそれが“誠”の恋であればそれでいい。
“しかし……しかし君、恋は罪悪ですよ。 解っていますか”
夏目漱石の『こころ』の中で言われた言葉だけど、今の自分は違うと言える。
恋は罪悪ではない。
名作、有名作家などで言われるいろいろな言葉があるけど、
それは受け手の問題もあるんじゃないかなと最近は思い始めてきた。
自分が高い位置で物事を判断できるようになったんじゃないかと、少し誇らしげに感じることもある。
名言は名言、私にあてはまるのかは別問題。
そうだ、きっと、そう。
この恋、だいじにしたい。
そうだ、家に帰って手紙を書こう。
誰にも内緒の秘密の手紙のやりとり。
きっとたのしいだろうな、スキップしたくなるような帰り道。
実際、周りを確かめて誰もいない様な小道でスキップしてみた。
小学生以来だろう、いい年してスキップなんて、でもスキップしてる私、とってもかわいい。 アハッ!
それからしばらくは彼との秘密の手紙交換会をやった。
手紙の受け渡しはいつもドキドキ。
クラスメートに見つかるんじゃないかといつもヒヤヒヤ。
それが楽しかった。
そのうち彼とじっくり話しあって、
彼も同じ高校を受験することになると私も負けられない思いに一生懸命勉強した。
学校以外で塾も同じ所に通うようになり、中学では出来ない帰り道デートを楽しんだ。
そして受験。
晴れて合格するとその帰路は初めて手をつないで歩いた。
誰から見ても仲睦まじいカップルに見える。
嬉しかった。
高校も合格でき、そして新しい高校での新しい二人の付き合いもできる。
高校では生徒会活動はやめよう。
誰にも、親にもまだ話ししたことがないけど、密かな目標もある。
ゆいはそれに向かって全力投球をしたい。
もちろん、恋もしながら。
≪第四章 ゆいの想い 終わり≫
レモンやオレンジの味はしなかったけど、でも確かに恋の味がした。
とっても爽やかで、大人びた自分が微笑ましく背伸びした気分。
その一方、ちょっぴり早いおとなの恋の経験に、本当に良かったんだろうかと思う心もある。
思春期の恋は複雑だ。
いろんな人の恋ばなしも聞いてみたいけど、今の私の立場でそんなことは聞けるはずない。
いいわ、私は私。
自分の恋がしっかりしていれば、それだけでいい。
人なんか関係ない。
私は私だもん、そうよ、きっとそうなの。
なんとなく自信めいた気分になれた。
シェークスピア “誠の恋をするものは、みな一目で恋をする”
ちょっぴり気になっていたことがあった。
自分は恋に落ちただろうか?
あの日、あの夜、懸命にバットの素振り練習をする彼の目。
あの目を見た時から変な気分になった。
それは何?
最初のうちは自問自答した。
“女は一瞬にして恋に落ちる”
その言葉に助けられた。
そう、私は女なんだ。
シェークスピアの云うとおりそれが“誠”の恋であればそれでいい。
“しかし……しかし君、恋は罪悪ですよ。 解っていますか”
夏目漱石の『こころ』の中で言われた言葉だけど、今の自分は違うと言える。
恋は罪悪ではない。
名作、有名作家などで言われるいろいろな言葉があるけど、
それは受け手の問題もあるんじゃないかなと最近は思い始めてきた。
自分が高い位置で物事を判断できるようになったんじゃないかと、少し誇らしげに感じることもある。
名言は名言、私にあてはまるのかは別問題。
そうだ、きっと、そう。
この恋、だいじにしたい。
そうだ、家に帰って手紙を書こう。
誰にも内緒の秘密の手紙のやりとり。
きっとたのしいだろうな、スキップしたくなるような帰り道。
実際、周りを確かめて誰もいない様な小道でスキップしてみた。
小学生以来だろう、いい年してスキップなんて、でもスキップしてる私、とってもかわいい。 アハッ!
それからしばらくは彼との秘密の手紙交換会をやった。
手紙の受け渡しはいつもドキドキ。
クラスメートに見つかるんじゃないかといつもヒヤヒヤ。
それが楽しかった。
そのうち彼とじっくり話しあって、
彼も同じ高校を受験することになると私も負けられない思いに一生懸命勉強した。
学校以外で塾も同じ所に通うようになり、中学では出来ない帰り道デートを楽しんだ。
そして受験。
晴れて合格するとその帰路は初めて手をつないで歩いた。
誰から見ても仲睦まじいカップルに見える。
嬉しかった。
高校も合格でき、そして新しい高校での新しい二人の付き合いもできる。
高校では生徒会活動はやめよう。
誰にも、親にもまだ話ししたことがないけど、密かな目標もある。
ゆいはそれに向かって全力投球をしたい。
もちろん、恋もしながら。
≪第四章 ゆいの想い 終わり≫