全身美容エステ 11話
慌ててコップを置き、施術台に登ろうとすると
「あっ、飲めるのでしたらリンゴジュース、全部飲んでください」
「あっ、はい」と言って、でも一口だけ飲んで置こうとしました。
「もう、飲めませんか?」
「いえ、そんなことはないんですけど」
「よかったら、ではなくて、できたら全部飲んでいただけませんか」
「えっ?」
「いえ、リンゴジュースはとっても体にいいもので、それでうちでは特に良いリンゴを使ってのジュースですから」
「そうなんですか」
「リンゴジュースには様々な効能があって、ポリフェノールについては先生から聞かれましたよね」
「あっ、はい」←うそ、覚えていない(笑)
「復習ですがポリフェノールは癌などの病気になる素を物質をやっつけてくれます」
「あ、、、はい、、、」←あまり聞いていない。
この年で癌と言われてもピンとこなかったのだろう。
「『1日1個で医者を遠ざける』と伝わるのはリンゴのことです」
「へえ~そうなんですか、初めて聞きました」
梅は“その日の難逃れ”って聞いたことはあるけど・・・
(ご参考:“朝茶はその日の難逃れ”という言葉もあります)
「女性が気になる栄養素の中にビタミンCがありますよね」
「はい」 知ってるぞ!リンゴにはビタミンCは少ないはずと心の中で思いました。
「果物といってもリンゴは残念ながら他の果物と比べてビタミンCが少ないんです。
でもその代わりといっちゃ変ですけど、
その他の食物でビタミンCが入ってくると体に吸収させやすい物質がリンゴにはあるんです」
「へぇ~、物知りですね」
「いえ、ここにきて勉強しました。 あはは、で、最も重要なのがリンゴは実は頭がよくなるんです」
「???」
「アセチルコリンと云う神経伝達物質の分泌を高めてくれて脳内の活動が活発になります。
もちろん脳内だけではなく体全体にも神経細胞が活発になるように高めてくれるんですよ」
「へぇ~、すごいんですね」
「だからお家に帰られてもリンゴをとるようにしてくださいね。
本当は食べた方がいいんです。 繊維質がそのまま体内に吸収されますからね。
ここでは摂取しやすいようにミキサーで拡散しますが、
それでもお客様が飲まれる直前にミキサーにかけてるんですよ」
「へぇ~、細かいサービスなんですね」
「外で飲まれる場合は、できるだけ濁ったリンゴジュースを飲んでくださいね」
「えっ? 透明ぽいのはだめなんですか?」
「濁っている方がポリフェノールはたくさん入っています。
透明なのは見た目が悪いので除去されているんですよね」
「へぇ~、そうなんですか。 勉強になりました」
「それでは足裏マッサージを始めますので台にうつぶせになってもらえますか」
台の上にうつぶせになるとマッサージが始まりました。
足の指を一つ一つ丹念にもんでくれます。
なんか、いい気分。
ところがすぐに様子が違ってきました。
指をクニュクニュ曲げられると、そのうち足裏ど真ん中をグイグイ押してきます。
最初はなんとか我慢していました。
ところがツボにはまったのか「いたぁ~い」
「あはは、大丈夫ですよ。 痛いところが悪いところなのでグイグイ押していきますからね。 我慢してください」
我慢するにも限度があります。
「ああっ!もうだめです」
「藍澤さんは大丈夫です。 たまにベッドから落ちそうになるくらい暴れる方がいらっしゃるんですよ。
藍澤さんはまだいけます。 頑張ってください」
「いや、はや・・・、 あはは、もう・・・」
人間、極度に痛いと笑うんですよね、まさしくその状態です。
「いたーい! あはは、もう、だめ、あはは、そこ、もう、だめ」
「藍澤さんは大丈夫みたいですね。 もうちょっと強くしますから我慢してください。
声はこの部屋は防音設備を施していますから大丈夫ですけど、
暴れると着ているものが乱れるので僕に中を見られちゃいますよ」
さすがに我慢です。
声は出していいといわれたので、それはそれでいいんですが、着衣が乱れると中を見られてしまいます。
さすがの私でも恋人でもない男性に密室で1対1で露出する度胸はありません。
ましてここはエステサロン、変な風に見られたら困ります。
でも、はらほれはら、いたーい! キッ、クゥーーー。
「はーい、終わりましたよ。 でもついでにふくらはぎもやっておきましょう」
「・・・」お願いしますとは、到底言えなかった。
「これはサービスですから、本来のコースには入っていません。 私の個人的なサービスですから」
余計なサービスはイランっと思た!
「藍澤さんって骨が強そうですね」
「そうですか?」
「それでは肉と骨に分けてマッサージしますので我慢してくださいね」
ほら来た! 我慢という言葉。
あひゃひゃ、痛いってもんじゃない。
肉離れを起こしそうな痛さです。
終わった後は体力を使い切っていました。
「リンゴジュースのお代わりを持ってきますから、しばらく休んでください」
お代わりのジュースを持ってきた後、ひとりぼんやりしていました。
ここでの美容エステとは、体力がなくなるものだと・・・
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