2012-10-19(Fri)
下田の海 9話
貴志君がピアノの前に座ると、いきなり軽快なリズムを刻みます。
あれ? なんていう曲だったかな? 思い出そうとしても思い出せません。
「知ってる? この曲」
「聞いたことあるけど、なんだったかなぁ。 思い出せないや」
「踊るポンポコリンだよ」
「あはは、そうだった! 面白い曲、弾くね。 ピアノって言うからクラシックを思ってた」
「最初、練習した時はそうだったよ。 でもつまらないからいろんな曲にチャレンジしてんだ」
そうすると“エリーゼのために”が流れてきました。
名曲のひとつです。 うっとりしながら聞いていました。
ノクターンは少し難しそうでした。
「じゃあ、運動会!」
トルコ行進曲です。 楽しそうに演奏してくれました。
「ものすごく上手じゃない。 とっても良かったわよ。 最高! 感心しっちゃった」
「えへへ、どうも。 まぁこんな程度ですけどね」
「いや、すごく上手だったわよ」
「じゃぁ、ちょっと待ってて、ジュース入れてくるから」
「あっ、いいわよ、おかまいなく」
「いや、僕も飲みたいから・・・」
「そう、あつかましくないかなぁ?」
「いや、出来たらゆっくりしていって欲しいんだ。
夜まで誰も帰ってこないから暇だし。話できれば嬉しいんだけど」
「そう? じゃぁ、ありがたく頂くわ」
「おれ、ちょっと、トイレ!」
「おれが先だもんね」
バタバタと二人が出て行きました。
私もお手洗いに行きたかったのですが、さっきも行ったばっかりなのに、
また行くとちょっと恥ずかしくてそびれてしまいました。
二人が戻ってくると、しばらくの間はまた野球の話を始めました。
高校生って楽しいですよね。 一番楽しかった時期かもしれません。
しかも体育会系なので“ノリ”も好くって馬鹿な遊びもよくしたものです。
「ごめんなさい、私も手洗いに行きたい」
「あっ、こっちね。 案内するよ」
長い廊下の端にトイレはありました。
なんと男女別です。
「すごいね、普通じゃないわよ」
「人が多かったときに作ったものだから・・・、じゃぁ、終わったらこっちね。 僕の部屋なんだ」
中に入ると結構広くて、なんとなく落ち着きませんでした。
窓から外の景色、草むらが見えます。
鏡を見てチェックを終えると手洗いの扉を開けました。
貴志君の部屋のドアが開いていて、こっちこっちって手招きします。
「おじゃましてもいいのかしら?」
「みんなの溜まり場だから遠慮しなくていいよ」
「じゃあ、失礼します。 へー、綺麗に片付いてるじゃない」
「へへ、大慌てで片付けた!」
「あらまぁ! たいへん」
「で、ひとつ、お願いがあるんだけど」
「ふ~ん? なぁ~に?」部屋を見渡しながら生返事をしちゃいました。
「あの~ぉ、その~ぉ・・・」
「なによ! 男の子らしくはっきり言いなさいよ」
「その、男だから言うんだけど・・・、もう1回って言うのはダメ?」
「もう1回ってなんのこと?」
「いや、その・・・、海で見せていただいたものを、もう1回だけ・・・」
「えっ? 海で見た?」
「そう・・・ そのかおりお姉さんの・・・」
「えっ、なになに? ひょっとしてここ?」私は胸に手を添えました。
「うん! そこ・・・ ぜひ、もう1回だけお願いします」
「お願いします」
「お願いです」
「お願いでございます」
「お願い申し上げます」
「お願いいたします」
「お願いね」
「ねっ、お願い」
「お願いしま~す」
「お願いだもん」
「おねげえします」
「姫、お願いします」
「お願いでやんす」
「お願いござそうろう」
「お願いじゃけん」
「お願いもうす」
「お願いでございますそうろう」
「おねげえだ!」
いきなり二人は正座から土下座をしながら連呼を始めました。
「ちょ、ちょっと、ちょっと、待ってよ。 そんなにいっぱい言われたら困る」
「そこをなんとかお願いします」
「え~ぇ、だってぇ~、・・・、どうして? どうしてそんなに見たいの?」
あれ? なんていう曲だったかな? 思い出そうとしても思い出せません。
「知ってる? この曲」
「聞いたことあるけど、なんだったかなぁ。 思い出せないや」
「踊るポンポコリンだよ」
「あはは、そうだった! 面白い曲、弾くね。 ピアノって言うからクラシックを思ってた」
「最初、練習した時はそうだったよ。 でもつまらないからいろんな曲にチャレンジしてんだ」
そうすると“エリーゼのために”が流れてきました。
名曲のひとつです。 うっとりしながら聞いていました。
ノクターンは少し難しそうでした。
「じゃあ、運動会!」
トルコ行進曲です。 楽しそうに演奏してくれました。
「ものすごく上手じゃない。 とっても良かったわよ。 最高! 感心しっちゃった」
「えへへ、どうも。 まぁこんな程度ですけどね」
「いや、すごく上手だったわよ」
「じゃぁ、ちょっと待ってて、ジュース入れてくるから」
「あっ、いいわよ、おかまいなく」
「いや、僕も飲みたいから・・・」
「そう、あつかましくないかなぁ?」
「いや、出来たらゆっくりしていって欲しいんだ。
夜まで誰も帰ってこないから暇だし。話できれば嬉しいんだけど」
「そう? じゃぁ、ありがたく頂くわ」
「おれ、ちょっと、トイレ!」
「おれが先だもんね」
バタバタと二人が出て行きました。
私もお手洗いに行きたかったのですが、さっきも行ったばっかりなのに、
また行くとちょっと恥ずかしくてそびれてしまいました。
二人が戻ってくると、しばらくの間はまた野球の話を始めました。
高校生って楽しいですよね。 一番楽しかった時期かもしれません。
しかも体育会系なので“ノリ”も好くって馬鹿な遊びもよくしたものです。
「ごめんなさい、私も手洗いに行きたい」
「あっ、こっちね。 案内するよ」
長い廊下の端にトイレはありました。
なんと男女別です。
「すごいね、普通じゃないわよ」
「人が多かったときに作ったものだから・・・、じゃぁ、終わったらこっちね。 僕の部屋なんだ」
中に入ると結構広くて、なんとなく落ち着きませんでした。
窓から外の景色、草むらが見えます。
鏡を見てチェックを終えると手洗いの扉を開けました。
貴志君の部屋のドアが開いていて、こっちこっちって手招きします。
「おじゃましてもいいのかしら?」
「みんなの溜まり場だから遠慮しなくていいよ」
「じゃあ、失礼します。 へー、綺麗に片付いてるじゃない」
「へへ、大慌てで片付けた!」
「あらまぁ! たいへん」
「で、ひとつ、お願いがあるんだけど」
「ふ~ん? なぁ~に?」部屋を見渡しながら生返事をしちゃいました。
「あの~ぉ、その~ぉ・・・」
「なによ! 男の子らしくはっきり言いなさいよ」
「その、男だから言うんだけど・・・、もう1回って言うのはダメ?」
「もう1回ってなんのこと?」
「いや、その・・・、海で見せていただいたものを、もう1回だけ・・・」
「えっ? 海で見た?」
「そう・・・ そのかおりお姉さんの・・・」
「えっ、なになに? ひょっとしてここ?」私は胸に手を添えました。
「うん! そこ・・・ ぜひ、もう1回だけお願いします」
「お願いします」
「お願いです」
「お願いでございます」
「お願い申し上げます」
「お願いいたします」
「お願いね」
「ねっ、お願い」
「お願いしま~す」
「お願いだもん」
「おねげえします」
「姫、お願いします」
「お願いでやんす」
「お願いござそうろう」
「お願いじゃけん」
「お願いもうす」
「お願いでございますそうろう」
「おねげえだ!」
いきなり二人は正座から土下座をしながら連呼を始めました。
「ちょ、ちょっと、ちょっと、待ってよ。 そんなにいっぱい言われたら困る」
「そこをなんとかお願いします」
「え~ぇ、だってぇ~、・・・、どうして? どうしてそんなに見たいの?」